アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 「考えられるケースは二つある。佐々木のお袋さんが浮気した場合と、元々二人の間に出来た子供でないかだ。つまり、乳児取り替え事件だ」


「でもお母さんに限って、そんなことは絶対に考えられない!!」

私の剣幕に水野先生はたじたじだった。


「そうだ。明日行ってみよう。佐々木の産まれた病院へ」
私を宥めながら水野先生は言った。


「早くしないと年末年始の休みになるよ」


「えっー、産婦人科も休むの?」


「そりゃそうだろう。赤ちゃんが産まれるのは一年中だけどね」

水野先生は笑いながら言った。




 「でも、行く前にやっておく事がある。それはDNA検査のための材料集めだ」

水野先生はそう言いながら近くの椅子に腰を掛け、本の予約表にメモをした。


「佐々木、携帯は?」

水野先生は当然のように手を出した。


「持っていないの」
そう私は携帯を持たされていなかったのだった。


「家に置き忘れたか、さっきの雪道かな?」


「いいえ、父が持たせてくれないんです」


「今時珍しいな」

当然のように言う水野先生に対して、私は俯くしかなかった。


「いや普通の親ごさんなら、心配で持たせるだろう。特に女子高生には……あっ、あれか……」

水野先生はそう言ってから、顔を曇らせた。


そう……
学校内では有名だったんだ。

個人情報保護法のため、連絡網が使えないから携帯の準備を促してみたら……


『その携帯から個人情報が漏れるんだ!』
そう言って反対にやり込められた。

それが父のやり方だった。

屁理屈こねて、我を通してしまうのだ。


仲間外れになったりするからと、担任が気遣ったのを知りながら……




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