アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 「ありがとう先生。でも私は大丈夫。先生が迎えに来てくれるまで待ってるよ。だって、まだ高一だもん。十五歳なんだから」
私はそう言った。
そう言ってみた。


でも本当は傍に居てほしかった。

何時までも、水野先生の傍に居たかった。


(――好きだよ。

――大好きだよ先生。

――本当はこのままずっと傍に居たいよ。

――でも……
先生は先生の道を進んで。


――私は待ってる。

――ずっと待ってる。

――だから……だから、待てるかって聞いて……)




 でも……
水野先生の言葉を遮るように下り電車が入って来た。

私達は早速それに乗り込んだ。


電車は満席に近かった。
私はお祖母ちゃんの家に向かった時の、勢い良く乗り込んだ隣の駅のことを思い出していた。


(――そうだ。何時もこんな状態だったからだ)

傍に水野先生が居ると言うのに、私はくだらないことばかり考えていた。

それは所謂照れ隠しだった。

マトモに水野先生を見らる情態ではなかったのだ。




 それでも私は逢えなかった時間を埋めるように色々な話をしていた。

過去から、未来まで……


私の夢は水野先生の傍にいること。

水野先生の夢は当然離島の教師だろう。


だから……
このまま傍に居て、何て言えるはずはなかった。




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