アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 綾ちゃんと水野先生の恋に端を発して、色んなことが一斉に起こる。


ごめんね綾ちゃん。
私が迂闊だった。


私達の……
って言うか……
私の応答から、偶々其処にいた親戚の人が勘ぐったのだ。


ナイスアイデアじゃなかったのだ。
本当に本当にごめんね綾ちゃん。




 水野先生は良家の次男坊で、親戚の人は勝手に結婚相手を決めていた。


それは、行方不明の誰かの子孫だった。


現実にいるかどうかも判らない人が結婚相手だなんて、水野先生でなくても逃避したくなるよね。


だから……
本当は綾ちゃんとの恋に現を抜かしている場合ではなかったのだ。

でも、だからこそ、この恋を認めてもらいたかったのだ。


私はそれを知りながら、それでも綾ちゃんを応援していたのだ。


だって家の父も、本当はその人を探出して結婚しなければいけなかったのだから。


母のように綾ちゃんも苦労することも解っていた。
立場は同じ、一人っ子だからね。
父はどさくさに紛れて清水家の婿養子になってしまったけど、水野先生はそうはいかない。
もう、親戚達を納得させることなんか出来ないのだから……


それでもめげないで、困難に立ち向かっていってほしいんだ。




 年末年始の行事が重なり親戚連中の集まりが多くなり、水野先生と綾ちゃんの恋が表面化したんだ。


それって、私がばらしてしまったことへの言い訳に過ぎないけどね。




 水野先生……
だいぶやり込められていたよ。
それでも水野先生は真っ直ぐだった。


本当に一途に綾ちゃんを愛してるね。
幸せ者だよ綾ちゃん。




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