アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 私は彼に神の御加護を賜るようにと、再び教会の前に来ていた。


何処で何をしているのかも解らないから、行き方不明の彼を神様に守ってほしかったのだ。


『天にまします、我等の神よ……』
私は神の御前に跪いた。


『願わくは御名をあがめさせたまえ。み国を来たらさせたまえ。御心の天なるごとく、地にもなせたまえ。我らの日ようの糧を今日も与えたまえ。我らに罪をおかす者を、我らが許すごとく、我らを許したまえ。我らを心みあわせず、悪より救い出したまえ。国と力と栄とは、限りなくなんじもものなればなり。アーメン』

私は私の罪を請うために、神に祈りを捧げた。


私の罪……
それは彼を一人で帰してしまったことに他ならない。
せめて、船に乗るまで見届ければ良かったのだ。




 『主よ……いま御前に立つ。まことと愛を分け合うため。主よ……いま二人を一つとなし、まこととしたまえこの誓いを……喜び悲しみ生きる限り。主よ……この二人を祝したまえ。愛する二人に溢れる喜び。造られた神をたたえて歌おう。互いに信じる心を実らせ、主の愛求めて正義に生きよう。試練の嵐に出会ったときこそ、互いに受け入れ、心を開こう。互いに引き裂く痛みの中でも、よみがえる愛を信じて祈ろう。ひとつのパンを分け合う二人は、心をあげつつ、主の愛歌おう』


それは……
神に……
主に捧げた結婚の誓いだった。


私は彼のいない祭壇で彼との愛を誓ったのだった。


(どんなに辛くても、悲しくても前に向かって歩いていくよ。貴方との約束だから……)

私はもう一度二人で決めた誓いの言葉を心の中で唱えていた。




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