アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 「へえー、そうなんですか? 時代劇の一シーンしか知りませんが、戦った浜辺以外何もない島のような印象ですね。もし海に投げ出されたなら、あの島にも流れ着いたのかな?」


「初めはそうだったらしいね。源氏の追求を恐れて、奥へ奥へと……又、別の島へと逃げて行ったのかも知れないな」


「源氏って、凄い勢いだったんですね」


「そうなんだよね。何処まで逃げても安心は出来なかったのじゃないのかな?」


「何時かそんなシーンを映画で見ましたが、何か危機迫るって感じでしたね」

私は呑気にそんなことを言っていた。


「実は俺の先祖は、追求する側の源氏だったんらしいけどね」


(えっ!?)

私は言葉を失った。


私が平家なら……

水野先生は……
言わば敵の人だった。


私達はその瞬間、ロミオとジュリエットになったような気がした。


(怖い……。もし二人が敵同士の家系だったら……。絶対反対されるに決まっている。先生……、大好きなのに!!)





 「ところで佐々木、もしかしたら佐々木小次郎の末裔か何かか?」

私が暗い顔でもしているのか、水野先生は冗談とも本気ともとれる質問をした。


「んな訳ないでしょう」

私は笑ってその場をごまかしていた。


「そうだよな。でも解んないぞ」
水野先生もそう言いながら笑っていた。




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