アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 AB型とO型の親の間にAB型の子供は出来ない。
何故なら、AB型の遺伝子がないから。
それが一般常識のようだ。

でも極まれに、AB型の遺伝子も持った人もいた。

それがシスAB型だった。

百万人又は二百万人に一人とも言われ、親子関係のゴタゴタなどを起こす元にもなっていた。


水野先生は血液型の本を見た時気付いたらしい。
今やどの本にでも載っている常識だったようだ。

でも……
私にぬか喜びをさせないために、迂闊な発言はしないと決めたのだそうだ。

それは水野先生の優しさだったんだ。
もし違っていたら……
そう考えて、胸の中にしまい込んだのだった。




 直ぐに家に電話をして、私の産まれた産婦人科に来るように訴えた。


母はパチンコ屋に出向き父を探し、娘に一大事が起こったらしいことを告げた。




 二人は何も知らないまま、夕方近くに産婦人科にやって来た。

水野先生と私が二人を出迎えた。


「ん!?」
水野先生の顔が一瞬くもった。


「お前、産婦人科の前で何をしている? 妊娠でもしたのか? 父親は一体何処のどいつだ?」


父は水野先生の前に出て行った。


「お前か! 家の娘に何をした!?」
父は水野先生に食ってかかった。


「やめてお父さん! 私の学校の先生だよ」
私は父を必死に止めた。


父はやっと大人しくなった。


「此処で一体何をやっているんだ!?」


私は父の質問に首を振りながら、父母を産婦人科医の元へ連れて行った。


(きっとさっきのは、父の殺気でビビったのかな?)

私は水野先生の発言を気にしながら、一緒に行動していた。




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