アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
「この方が例のお姫様?」
水野先生のお母様が何かを言っていた。
でも私は上の空だったようだ。
「紹介するよ。俺の親父とお袋。この人は、俺が研修していた学校の生徒で」
水野先生は、そんな私の肩に優しく手を置いてくれた。
私はハッとした。
余りの緊張に一時的に我を失っていたためだった。
「佐々木綾と申します。よろしくお願い致します」
私は慌てて、深々と頭を下げた。
「初めてね。孝之がイトコ意外の女性を連れて来るなんて」
お母様は、ティーカップのソーサーをさり気なく膝に置いている。
上品そうな振る舞いに、私はときめいていた。
「女性に興味があると分かって、正直ホッとしてる」
(えっ!?)
お父様の発言に私は戸惑いを隠せなかった。
慌てて清水さんを見ると、普通にしていた。
「『実は俺』なんて今流行りのカミングアウトはイヤですものね」
お母様もそれに続いた。
両親は水野先生を、ゲイだとでも思っていたのだろうか?
でも何故清水さんは平気なのだろう?
もしかしたら、何時もこんな風にざっくばらんなのだろうか?
テーブルは何時かテレビのマナー教室で見たような、優雅なセッティング。
其処に漂う紅茶の香り。
それはまるで、本物のシンデレラ姫になったような心持ちだった。
「オネエ系だと思っていたのかい? ヤだな。興味がなかっただけだよ。勿論男にも」
水野先生は軽く言った。
「そう言えば、『先生になるんだ』って言って、勉強ばかりしていたわね」
「いつの間に目覚めたんだ。確かバレンタインデーはまだのはずだが?」
「渋谷だよ。この子のお母さんがデッカいパネルを持っていて、『綾ちゃーん!!』 って交差点の真ん中で叫んでいたんだ」
私は急に恥ずかしくなって口籠もった。
水野先生が心配そうに覗き込んでいる。
私はそっと顔を上げた。
おそらくは赤面しているはずだ。
頬が熱を帯びていた。
水野先生のお母様が何かを言っていた。
でも私は上の空だったようだ。
「紹介するよ。俺の親父とお袋。この人は、俺が研修していた学校の生徒で」
水野先生は、そんな私の肩に優しく手を置いてくれた。
私はハッとした。
余りの緊張に一時的に我を失っていたためだった。
「佐々木綾と申します。よろしくお願い致します」
私は慌てて、深々と頭を下げた。
「初めてね。孝之がイトコ意外の女性を連れて来るなんて」
お母様は、ティーカップのソーサーをさり気なく膝に置いている。
上品そうな振る舞いに、私はときめいていた。
「女性に興味があると分かって、正直ホッとしてる」
(えっ!?)
お父様の発言に私は戸惑いを隠せなかった。
慌てて清水さんを見ると、普通にしていた。
「『実は俺』なんて今流行りのカミングアウトはイヤですものね」
お母様もそれに続いた。
両親は水野先生を、ゲイだとでも思っていたのだろうか?
でも何故清水さんは平気なのだろう?
もしかしたら、何時もこんな風にざっくばらんなのだろうか?
テーブルは何時かテレビのマナー教室で見たような、優雅なセッティング。
其処に漂う紅茶の香り。
それはまるで、本物のシンデレラ姫になったような心持ちだった。
「オネエ系だと思っていたのかい? ヤだな。興味がなかっただけだよ。勿論男にも」
水野先生は軽く言った。
「そう言えば、『先生になるんだ』って言って、勉強ばかりしていたわね」
「いつの間に目覚めたんだ。確かバレンタインデーはまだのはずだが?」
「渋谷だよ。この子のお母さんがデッカいパネルを持っていて、『綾ちゃーん!!』 って交差点の真ん中で叫んでいたんだ」
私は急に恥ずかしくなって口籠もった。
水野先生が心配そうに覗き込んでいる。
私はそっと顔を上げた。
おそらくは赤面しているはずだ。
頬が熱を帯びていた。