アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 「あの時本当にコケた姿が可愛くて、思いっ切りハートをグサッと遣られた。一目惚れだったんだ」


(えっーー!? そんな事聞いてないよ!!)

私はただあ然としていた。




 「そう言えば、あの時の顔も今のように真っ赤だったな」

そう言いながらって水野先生も急に口籠もった。

その後、清水さんに確認するように目配せをしながらそっと私に寄り添ってくれた。

私は幸せな一時に酔いしれていた。




 「雪の降る中。この子は自転車で学校の行事に参加しようと頑張ったんだけど、警備員に止められんだ」

でも水野先生は私が一番触れてほしくない話題を口にしていた。

私はハッとして、水野先生を見た。


(先生お願いそれだけは言わないで!! イヤだよ先生、言っちゃイヤだよ!)

私は必死に目で訴えた。

頭を振って抵抗した。




 でも心配する事は無かったんだ。


「家族の具合が悪くなって車で送れなくなってね」

水野先生は両親に向かってそう言った後、私を見つめてから震えている体を抱き締めてくれた。


「佐々木は主役だった。でも……だからって訳じゃなく、責任感が強くて努力家なんだ」

水野先生は泣いていた。
泣きながら私を抱き締めていた。


「あの後で、君が来た道を目で追ってみたんだ。雪の中に自転車の車輪の跡が続いていて、思わず守ってやりたいと思った。だから……だから」

水野先生も震えていた。
でも必死に耐えていた。

そして遂に言い放った。


「だからもっと君が好きになった」
と……


「ハハーン。そう言うことか?」


「ん、何だ清水?」


「それで水野先生がメロメロになった訳ね」

その発言は水野先生の顔を真っ赤に染めさせた。




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