アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
逅い(であう)・少年
三月の最終土曜日。
僕は熊谷駅前にいた。
僕の正当防衛を立証してくれたSL好きのおばさんの個展が始まる情報をゲットしたのだ。
僕はおばさんの写真のお陰で少年院から退院出来たのだった。
何故おばさんがこの日を個展の初日に選んだのか訳を聞いた。
実は今日がSLパレオエキスプレスの初出走日だそうで、それに合わせたのだそうだ。
(流石にSL好きなことある)
僕はそう思いながら、JRのホームを急いでいた。
秩父線のホームでは、記念イベントが開催されているはずだ。
だからなのかな?
熊谷駅は混雑していた。
予想はしていた。
父のパソコンを借りて、それ位は調べたさ。
今日は僕一人じゃない。
両親や兄弟達も一緒なんだ。
話せば長くなるけど……
兎に角九時から始まる会場を目指さなければならないんだ。
おばさんの個展会場へと足を運んで、係りの人にお礼が言いたいと伝言した。
「彼方の方がお礼を申したいと言っておられますが……」
微かに聞こえてくる声に、其処にいるのがその人だと思った。
でも一緒に振り向いたのは……
「嘘……」
その言葉に聞き覚えがあった僕は、其処を見て思わず固まった。
その人は、会いたくて会いたくてたまらなかった清水さんだった。
清水さんも僕を見たまま固まっていた。
清水さんは動けなくなっていたようで、仕方なく腕を広げた。
あまりに驚いて、僕だって動けないんだ。
それでも勇気と言うか力を振り絞った。
一歩一歩だったけど、やっと歩いたんだ。
目の前で清水さんの柔らかそうな唇が僕の名前を呼んでいた。
僕の体はおばさんに向かうのではなく、無意識的に清水さんを目指していた。
僕は熊谷駅前にいた。
僕の正当防衛を立証してくれたSL好きのおばさんの個展が始まる情報をゲットしたのだ。
僕はおばさんの写真のお陰で少年院から退院出来たのだった。
何故おばさんがこの日を個展の初日に選んだのか訳を聞いた。
実は今日がSLパレオエキスプレスの初出走日だそうで、それに合わせたのだそうだ。
(流石にSL好きなことある)
僕はそう思いながら、JRのホームを急いでいた。
秩父線のホームでは、記念イベントが開催されているはずだ。
だからなのかな?
熊谷駅は混雑していた。
予想はしていた。
父のパソコンを借りて、それ位は調べたさ。
今日は僕一人じゃない。
両親や兄弟達も一緒なんだ。
話せば長くなるけど……
兎に角九時から始まる会場を目指さなければならないんだ。
おばさんの個展会場へと足を運んで、係りの人にお礼が言いたいと伝言した。
「彼方の方がお礼を申したいと言っておられますが……」
微かに聞こえてくる声に、其処にいるのがその人だと思った。
でも一緒に振り向いたのは……
「嘘……」
その言葉に聞き覚えがあった僕は、其処を見て思わず固まった。
その人は、会いたくて会いたくてたまらなかった清水さんだった。
清水さんも僕を見たまま固まっていた。
清水さんは動けなくなっていたようで、仕方なく腕を広げた。
あまりに驚いて、僕だって動けないんだ。
それでも勇気と言うか力を振り絞った。
一歩一歩だったけど、やっと歩いたんだ。
目の前で清水さんの柔らかそうな唇が僕の名前を呼んでいた。
僕の体はおばさんに向かうのではなく、無意識的に清水さんを目指していた。