アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
僕は夢の中にいた。
あの日もSLの出走日で、やはり混んでいた。
僕は母とSLの一つ前の電車に乗ったんだ。
車内の様子はあまり覚えていない。
だって、お母さんが一緒なんだよ。
嬉しくて嬉しくてたまらなかったんだ。
四月一日生まれの僕は、十五歳になる少し前に母に引き取られた。
中学を卒業して施設を出なければいけなかったからだ。
僕の本当の夢は、清水さんのお父さんのように先生になることだった。
それを知っていた清水さんだからこそ、高校程度を勧めてくれたのだ。
だから母に、働きながら勉強したいと言ったんだ。
母は頷いてくれた。
それが一番嬉しかったんだ。
僕達は上長瀞の駅で降りて、荒川の川原を目指した。
前に清水さんの一家と遊んだって話したからなんだ。
思いで作りだそうだ。
僕はその言葉を信じて、博物館の下の道を歩いた。
突然息が出来なくなった。
母が水の中に僕の頭を押さえつけたからだった。
苦しい……
息が苦しい……
(そうかこれか? だから息が出来なかったんだ)
僕は必死にもがいた。
でも母はその手を離してくれなかった。
力の限り暴れた。
でも駄目だった。
無我夢中で川の石を拾い上げた僕は、母の体をそれで叩いた。
やっと解放された僕は普段通りの呼吸を回復したんだ。
全てが繋がった時、この夢の正体を知った。
僕はもう少しで母に殺されるところだったのだ。
僕を誘拐しあの島に放置して、再会した時に夫殺しを企んでいた母と名乗った女性に……
夢を……見ていた。
広い広い雑木林の中をを僕は一人さ迷っていた。
そうだ。
此処は以前も来たことがあった。
そう思った途端急に元気になった。
鬱蒼と生い茂る木々の中を闇雲に進むと急に辺りが開けた感じがした。
其処にあったのは川だった。
川の中に手をそっと伸ばすと、何かに当たった。
それは小さな石だった。
僕はそれを……
僕はそれを、どうしたんだろう?
答えは今出た。
僕はやはり、母をあの石で殺していたんだ……
殺してしまっていたんだ。
あの日もSLの出走日で、やはり混んでいた。
僕は母とSLの一つ前の電車に乗ったんだ。
車内の様子はあまり覚えていない。
だって、お母さんが一緒なんだよ。
嬉しくて嬉しくてたまらなかったんだ。
四月一日生まれの僕は、十五歳になる少し前に母に引き取られた。
中学を卒業して施設を出なければいけなかったからだ。
僕の本当の夢は、清水さんのお父さんのように先生になることだった。
それを知っていた清水さんだからこそ、高校程度を勧めてくれたのだ。
だから母に、働きながら勉強したいと言ったんだ。
母は頷いてくれた。
それが一番嬉しかったんだ。
僕達は上長瀞の駅で降りて、荒川の川原を目指した。
前に清水さんの一家と遊んだって話したからなんだ。
思いで作りだそうだ。
僕はその言葉を信じて、博物館の下の道を歩いた。
突然息が出来なくなった。
母が水の中に僕の頭を押さえつけたからだった。
苦しい……
息が苦しい……
(そうかこれか? だから息が出来なかったんだ)
僕は必死にもがいた。
でも母はその手を離してくれなかった。
力の限り暴れた。
でも駄目だった。
無我夢中で川の石を拾い上げた僕は、母の体をそれで叩いた。
やっと解放された僕は普段通りの呼吸を回復したんだ。
全てが繋がった時、この夢の正体を知った。
僕はもう少しで母に殺されるところだったのだ。
僕を誘拐しあの島に放置して、再会した時に夫殺しを企んでいた母と名乗った女性に……
夢を……見ていた。
広い広い雑木林の中をを僕は一人さ迷っていた。
そうだ。
此処は以前も来たことがあった。
そう思った途端急に元気になった。
鬱蒼と生い茂る木々の中を闇雲に進むと急に辺りが開けた感じがした。
其処にあったのは川だった。
川の中に手をそっと伸ばすと、何かに当たった。
それは小さな石だった。
僕はそれを……
僕はそれを、どうしたんだろう?
答えは今出た。
僕はやはり、母をあの石で殺していたんだ……
殺してしまっていたんだ。