アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
僕達は三峰口で降車して、駅の近くにある食堂に入り麦トロを注文した。
急いで腹ごしらえをした後で、SLをバックに記念撮影をした。
僕と両親。それと綾さんの御両親。
それぞれの別れ前の思い出とするためだった。
そう……
両親は僕が離島へ行くことを認めてくれたんだ。
綾さんは清水さんのイトコの水野孝之さんとの結婚が決まり、あの離島へ旅立つと聞く。
春休み中なので、清水さん一家も行くことになっているそうだ。
「だったら……、僕も一緒に連れて行ってください」
その発言に両親は戸惑ったようだ。
「そんな……」
母は遂に堪えきれずに泣き出した。
僕は本当は両親の子供としてはこの世に存在していない。
それを認めた時、両親は僕への思いを裁ち切ったはずだった。
でも現実に出来るはずがなかったのだ。
「やっと逢えたのに……」
母は唇を噛み締めた。
「もうよそう。この子が苦しむだけだ」
父は母の肩にそっと手を置いた。
「母さん、父さん行って来ます」
さようならは言えなかった。
だから敢えて、旅立ちの言葉を選んだんだ。
「そうだ行って来い。会いたければ私達が行くから、遣りたいことを思いっ切りやってこい」
「そうよね。私達が行けばいいのよね」
母はそう言った後で僕を抱き締めた。
「行ってらっしゃい。私達に気兼ねしないで行ってらっしゃい。会えなかった分まで、彼方のお母様に思いっきり甘えて……」
遂に堪えきれなくなったのか、母の目頭から涙が溢れ出した。
聞いた話しによると、僕にリンチを仕掛けた少年は僕が医療少年院へ送致されて暫くした後であの少年院を出たそうだ。
その頃には僕が川の中に頭を抑え付けられて殺されかけたことが解っており、教官の判断で彼に教えたそうだ。
幾ら自分の気が収まらなくても……
見せしめの制裁であったとしても、やってはならないことだと教えるためだったようだ。
僕が本当は被害者だったことを知ると、泣いて謝罪の言葉を口にしたそうだ。
彼も彼なりに苦しんだのかも知れない。
そう思った。
急いで腹ごしらえをした後で、SLをバックに記念撮影をした。
僕と両親。それと綾さんの御両親。
それぞれの別れ前の思い出とするためだった。
そう……
両親は僕が離島へ行くことを認めてくれたんだ。
綾さんは清水さんのイトコの水野孝之さんとの結婚が決まり、あの離島へ旅立つと聞く。
春休み中なので、清水さん一家も行くことになっているそうだ。
「だったら……、僕も一緒に連れて行ってください」
その発言に両親は戸惑ったようだ。
「そんな……」
母は遂に堪えきれずに泣き出した。
僕は本当は両親の子供としてはこの世に存在していない。
それを認めた時、両親は僕への思いを裁ち切ったはずだった。
でも現実に出来るはずがなかったのだ。
「やっと逢えたのに……」
母は唇を噛み締めた。
「もうよそう。この子が苦しむだけだ」
父は母の肩にそっと手を置いた。
「母さん、父さん行って来ます」
さようならは言えなかった。
だから敢えて、旅立ちの言葉を選んだんだ。
「そうだ行って来い。会いたければ私達が行くから、遣りたいことを思いっ切りやってこい」
「そうよね。私達が行けばいいのよね」
母はそう言った後で僕を抱き締めた。
「行ってらっしゃい。私達に気兼ねしないで行ってらっしゃい。会えなかった分まで、彼方のお母様に思いっきり甘えて……」
遂に堪えきれなくなったのか、母の目頭から涙が溢れ出した。
聞いた話しによると、僕にリンチを仕掛けた少年は僕が医療少年院へ送致されて暫くした後であの少年院を出たそうだ。
その頃には僕が川の中に頭を抑え付けられて殺されかけたことが解っており、教官の判断で彼に教えたそうだ。
幾ら自分の気が収まらなくても……
見せしめの制裁であったとしても、やってはならないことだと教えるためだったようだ。
僕が本当は被害者だったことを知ると、泣いて謝罪の言葉を口にしたそうだ。
彼も彼なりに苦しんだのかも知れない。
そう思った。