アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 その時、急に目隠しをされた。


(えっ!? 一体何が始まるの!?)

でも……
不安は無かった。

水野先生がしっかりサポートしてくれていたからだった。


(この香りは、あの時のオーデコロン。水野先生は私のためにこの香りを選んでくれたんだ。こんな、何の取り柄もない私のために……)

泣けてきた。
無性に泣けてきた。


私は目隠しされているのを良いことに、思いっきり瞳を濡らしていた。




 「羨ましい〜!!」
でも、その声現実に呼び戻された。


(今のは……、清水さんの声ね。そりゃ羨ましいでしょう。清水さんの彼はまだ十五歳だものね。でもまさか同世代の人の中に、私より遅い人が居たなんて……。よりによって四月ー日生まれだったなんて。清水さんが悔しがるはずだよね。二人が結婚出来るまでには後二年もあるからね)


目隠しの隙間からそっと覗くと、清水さんがハンカチを噛みしめていた。


何故だか解らない。
その目隠しは緩くて優しかった。


(だからこんなに見えるのね。でも一体何で? 何のための目隠しなんだろう?)


清水さんの歯ぎしりの音に、本当はビクつきながら父のエスコートでヴァージンロードを歩いている。


(えっーー!? 水野先生じゃ無かったの? もしかしたら私はずっと父と……。初めてだものね。父とこんな風に歩いたこともないもの……。もしかしたら、このために緩かったの?えっでも、何時来たの!?)

そう……
きっと全てが水野先生のサプライズ。

そうに違いない。


私は水野先生の優しさに思いっきり泣いていた。




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