アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
父とはこの前、SLに乗ってさよならの思い出作りをしたと思っていた。
あれはきっと作戦?
私にそう思い込ませようと水野先生が仕掛けたのかな?
(イヤ、誘ったのは確か私達だったはず……)
だけど……
そんなこともうどうでもよくなった。
私は素直に父を信じればいいんだ。
だけど幾ら何でも、恋人と父を間違えるなんて……
(父の匂いって何だったのだろう? 何年か前まではタバコのヤニ。今は? 判らない。でもこの香りは……? 確か渋谷で……。そうあの時のオーデコロンの香り……。私をときめかせたあの出逢いの時の……。だから判らなかったんだ……)
私は苦笑しながら真っ直ぐ歩いていた。
父の手が髪に触れ、そっと目隠しが外される。
目の前には大好きな水野先生が待っていた。
私は愛する王子様の待つ祭壇へと一歩一歩近づいて行った。
まさにサプライズ。
そのものだった。
まさか父が……
其処にいるなんて……
それも水野と同じオーデコロンを付けて……
そう言えば……
水野先生は学校ではあの香りを付けていなかった。
(だから昇降口で気付かなかったのか……。きっと私を驚かすために考えたんだ。意地悪……。本物に意地悪……)
私は水野先生を見つめた。
でも本当は水野先生の気配りに泣いていた。
父のエスコートだけじゃない。
三三九度だけだと思っていた結婚式が、又挙げられなんて思ってもいなかったから。
父も泣いていた。
妻と娘を信じてやれなかった、心の弱さをさらけ出しながら。
あれはきっと作戦?
私にそう思い込ませようと水野先生が仕掛けたのかな?
(イヤ、誘ったのは確か私達だったはず……)
だけど……
そんなこともうどうでもよくなった。
私は素直に父を信じればいいんだ。
だけど幾ら何でも、恋人と父を間違えるなんて……
(父の匂いって何だったのだろう? 何年か前まではタバコのヤニ。今は? 判らない。でもこの香りは……? 確か渋谷で……。そうあの時のオーデコロンの香り……。私をときめかせたあの出逢いの時の……。だから判らなかったんだ……)
私は苦笑しながら真っ直ぐ歩いていた。
父の手が髪に触れ、そっと目隠しが外される。
目の前には大好きな水野先生が待っていた。
私は愛する王子様の待つ祭壇へと一歩一歩近づいて行った。
まさにサプライズ。
そのものだった。
まさか父が……
其処にいるなんて……
それも水野と同じオーデコロンを付けて……
そう言えば……
水野先生は学校ではあの香りを付けていなかった。
(だから昇降口で気付かなかったのか……。きっと私を驚かすために考えたんだ。意地悪……。本物に意地悪……)
私は水野先生を見つめた。
でも本当は水野先生の気配りに泣いていた。
父のエスコートだけじゃない。
三三九度だけだと思っていた結婚式が、又挙げられなんて思ってもいなかったから。
父も泣いていた。
妻と娘を信じてやれなかった、心の弱さをさらけ出しながら。