アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 結局彼は清水さん達と一緒に戻って来た。

ついでって言ったらなんだけど、本当の御両親も二人の弟も付いて来た。


春休み中なので親子兄弟の思い出作りと、島へのルートを確認するためだった。

そんなこんなで、暫くは賑やかになりそうだ。




 彼はまず育ててくれた島の母親の元へ行った。


彼は砂浜で跪き、その胸に顔を埋めた。


島の母親は彼の頭に手を置いて力の限りに抱き締めた。


美しい光景で、夕焼けがまるで後光のように二人を浮かび上がらせた。

と清水は言っていた。




 夏休みに清水波留が此処に来た理由は、彼が自分に黙って彼が何処かに行くはずがない。
そう思っていたからのようだ。




 清水は島の人達に彼の手がかりを聞いて回った。


彼を育ててくれ人ならば何かが解ると思って訪ねたら、彼が島に戻る途中で奇跡的な出会いをしたことを知ったそうだ。


彼は彼を捨てた母親と再会していたのだ。


でもそれ以来、行くがた不明になってしまったらしいのだ。


でもきっと何処かで幸せにやっているんだろう。

島の母親はそう思うことにしたそうだ。


慈愛溢れる彼に、母親も心を癒されている。

清水もそう思うことにした。


それにしても歳を取った。彼が支えだったからな。

オバさんを見てそう思ったそうだ。




 彼は父親にそっくりだった。
元婚約者なら、一目で島に棄てた子供だと解ったのかも知れない。


でも、そんな彼を殺人の道具に使うなんて……

俺はその女性を許せない。
その上、彼を殺して保険金を騙し取ろうなんて……

絶対に許せないと思った。




 その保険は県民共済と言って、十五歳から掛けられるそうだ。

掛け金は二千円と倍額の四千円。
不慮の事故死の場合二千円で一千万円、四千円で二千万円が支払えるそうだ。


だから彼女は彼が十五歳になるのを待った。
そのために、彼を引き取った訳だったのだ。




< 175 / 179 >

この作品をシェア

pagetop