アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 ……ガバッ。

目を開けると、何時もの部屋。
鉄格子のはめてある窓の向こうに目をやると、星が瞬いていた。


(まだ夜か)

布団の上に正座して遠い星を見つめた。




 あの風景……
前に何処かで見たことがある。

でも、それが何処なのか今まで解らなかった。

だけどさっき夢で……やっと思い出した。

あれはきっと荒川だ。


でも……
僕は彼処で何をしていたのだろうか?


そしてあの石で僕は何をしようとしていたのだろう?


解らない。


あんな夢を見るために彼処に入った訳ではない。
楽しいことが待っているはずだったんだ。


でもきっとそれは罪滅ぼし。
僕の深部にある何かがそれを見せてくれたのだろう……




 この施設に入ってもうすぐ一ヶ月。


三ヶ月過ぎるとじきにマッサラ生活が始まる。

マッサラとは新入りのことだと担当の教官が教えてくれた。




 この風景にも見慣れてきた。
本当は此処に居ること事態が未だに信じられないのだけれど。


此処は人生の待合室とよばれる施設。
少年院だ。


何故僕が此処に居るのか判らない。

ただ……
誰かを殺したらしいと言うことだけは周りの人達が教えてくれた。


そう……
あの石だ。
あの石で僕は母を殺したんだ。


さっきまで僕の見ていた夢が、皮肉にもその答えを教えてくれていた。




 十六歳未満の犯罪者は、少年刑務所ではなく、此処に入る場合もあるらしい。


だから僕は少年院収容受刑者と言われてるのだ。




 だから僕は……
夢だと承知で……
此処から逃げ出したかったんだ。


あの夢が、僕の犯罪を立証する羽目になるなんて考えていなかったのだけど……




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