アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 でも問題が発生した。

何故今日渋谷に行ったかと言えば、それは音楽ギフト券を使うためだったのだ。


その券はだいぶ前に使用出来なくなっていたのだ。


「えー!? そんなの知らないよ!!」
母は、相当がっかりしたらしく、塞ぎ込んでいた。


「本当にもう使えないのですか? 対処方法はないのですか?」

私は諦め切れず店員に詰め寄った。


店員は慌てて店の奥へ入って行った。




 「終了した半年位は現金化する対策が取られていたそうですが、今はないそうです。あのー、それもう何年も前の話だそうですが……」

店員は困り果てた顔で言った。


渋谷が新宿に変わっても使えるはずだったギフト券。

母は今はもう使用不可になった物を大切にバッグに締まった。


一万円分の紙屑を、ポイッと捨てられなかったのだ。


母は仕方なく、財布から五千円札を出した。


「綾と美味しい物を食べたかったのに……」

母はそう言い訳をした。


「そう言えばお母さん。その音楽ギフト券って、私が小学生の時に貰った物だったわよね。どうしてRDのCD買う時に使わなかったの? その時使っていれば、こんな思いしなくても良かったのに……」

私は又母が落ち込むのを承知しながら愚痴を吐いていた。


ギフト券が使用不可だったことは、その時に解ったはずだって言いたかったのだ。




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