アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
近くのホテルでの食事会が終わり、再び家に戻って伯母と叔母は着替えていた。
父と母は近所の川へ庭に置く石を探しに行っていた。
私も出掛けようとしたけれどヒールのある靴だったので諦めて帰って来た。
着替え中だと知っていたので、私は悪いと思って中に入らなかった。
「全く恵ったら、今日がどんな日か分かっているのかしら?」
伯母の声だった。
「ちっとも分かっていないわよ」
叔母の声だった。
「少しでも手伝う気があればもう少し早く来られるのに!」
その言葉に私はシュンとした。
母は何時も陰で、このような言われ方をされていたのだろう。
悪いのは母ではなく、父だって言うのに。
夫だけではなく、姉妹からも虐げられていた母。
ふと私の脳裏に、渋谷で会った老人の言葉が甦って来た。
『私は初めて見た。あんな哀しそうな目をした人に』
この事だったのか?
今日叉母の目が暗くなったのは、このような言われ方をしていると分かっていたからなのか?
私は、原因をワザと作る父が許せなくなっていた。
「恵ってああ見えて意地っ張りでしょう? だから私昔からかったことがあって。ほらプリンの話よ」
「ああ、あのこと。お父さんに恵が叩かれたやつ?」
伯母が叔母に問いかけている。
私は次の言葉が気になり動けなくなった。
「あれって、恵が悪いんじゃなかったの?」
「実は私が仕掛けたの。ここだけの話。絶対秘密にしてよ」
叔母は軽く咳払いをして話し出した。
「お母さんに頼んでプリンを五個作ってもらったの。あの人が余りにも嬉しそうだったから、『あんた分はないよ』って言ったら本気にして」
「呆れた。だから恵はお父さんに『自分の分はないから食べられない』って言ったの?」
「そう。意地っ張りだからね」
叔母は軽く流した。
「それで叩かれたの?」
伯母は声を詰まらせたようだった。
泣き声が聞こえてきた。
「今も覚えているわ。お父さん、人が変わったように殴る蹴るしていた。恵が悪いんだとばかり思っていたわ。話が違う」
父と母は近所の川へ庭に置く石を探しに行っていた。
私も出掛けようとしたけれどヒールのある靴だったので諦めて帰って来た。
着替え中だと知っていたので、私は悪いと思って中に入らなかった。
「全く恵ったら、今日がどんな日か分かっているのかしら?」
伯母の声だった。
「ちっとも分かっていないわよ」
叔母の声だった。
「少しでも手伝う気があればもう少し早く来られるのに!」
その言葉に私はシュンとした。
母は何時も陰で、このような言われ方をされていたのだろう。
悪いのは母ではなく、父だって言うのに。
夫だけではなく、姉妹からも虐げられていた母。
ふと私の脳裏に、渋谷で会った老人の言葉が甦って来た。
『私は初めて見た。あんな哀しそうな目をした人に』
この事だったのか?
今日叉母の目が暗くなったのは、このような言われ方をしていると分かっていたからなのか?
私は、原因をワザと作る父が許せなくなっていた。
「恵ってああ見えて意地っ張りでしょう? だから私昔からかったことがあって。ほらプリンの話よ」
「ああ、あのこと。お父さんに恵が叩かれたやつ?」
伯母が叔母に問いかけている。
私は次の言葉が気になり動けなくなった。
「あれって、恵が悪いんじゃなかったの?」
「実は私が仕掛けたの。ここだけの話。絶対秘密にしてよ」
叔母は軽く咳払いをして話し出した。
「お母さんに頼んでプリンを五個作ってもらったの。あの人が余りにも嬉しそうだったから、『あんた分はないよ』って言ったら本気にして」
「呆れた。だから恵はお父さんに『自分の分はないから食べられない』って言ったの?」
「そう。意地っ張りだからね」
叔母は軽く流した。
「それで叩かれたの?」
伯母は声を詰まらせたようだった。
泣き声が聞こえてきた。
「今も覚えているわ。お父さん、人が変わったように殴る蹴るしていた。恵が悪いんだとばかり思っていたわ。話が違う」