アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 苦しい……
息が苦しい……


(今度は何なんだ。何故息が出来ないんだ?)

僕は必死にもがいて、やっと普段通りの呼吸を回復する。


この夢をもう何度見ただろう。

時々前後が逆転はするけど、あの石の夢を見たら必ずこれだった。


彼処は何処?

どうしてあんなに息が出来ないの?




 ふと目を覚ます。
此処が何処なのか一瞬解らなかった。


(あっ、此処は少年院か? あの鉄格子は間違いない。僕は罪を犯して此処に入れられたんだ)




 でも僕には、その罪が何なのか解らない。

記憶が無いんだ。
僕の頭の中には小さかった頃のことしかない。


それでもさっきの夢でやっと思い出した。


僕が母を殺したと言う事実を……
認めた訳ではないけれど。


この幾日間、何故此処に居るのかさえも判らないままでただ時の流れを呆然と生きていた。


そう僕は数ヵ月前までは、何処にでもいるような普通の中学年だったのだ。

あの日。本当の母と出合う前までは……




 此処が少年院だと言うことだけは解っていた。


少年院。
十四歳以上の未成年の収監場所。
悪いことをした少年を入れる所。

非行を犯した少年を収容し、矯正教育をする所。

初等中等特別医療の四種類の少年院がある。
前科はつかないが成績が悪いと退院が長引く。

そんなことを入院した時に言われた。


少年院は収容少年に矯正教育を授けさせる場所らしい。

社会適応性を養わせると共に少年を取り巻く環境を調整し自力更正の力をつけさせる。


そして再出発を容易する反面、社会秩序の維持治安非行による被害からの防衛を分担する施設なのだ。




 約三ヶ月の独居生活の後に、グループで生活させる部屋へと移動する。


新入院生をマッサラと言って、耐えがたい苦労なども待っていると聞く。


一体、僕はどうなってしまうのだろうか?




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