アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 「なあ佐々木。本当に初対面か?」


(まだ言ってるよ。そんなに私が気になるのかな?)

そんなことを思いながら水野先生の言葉に頷いた。


教育実習生も、生徒から見ると教師なのだ。

だからみんな先生と呼ばれているのだ。


「それが、ナンパ手口? 女子高生、特に高一を口説くなんて」

そう言っていた。

でも、本当はバクバク状態だった。
だからワザとそう言ってみた。

だって本当に素敵な先生だったから。


(こんな素敵な人、誰も放ってはおかない。こんな人に恋でもしたら、後々が大変だ。でも……格好いい。格好良すぎるよ)

私の片思いはこうして始まった。




 教育実習生か何だか知らないけれど、男子大学生が女子高に潜入出来るんだからこんなよだれ物ないよな。

しかも、ちょーイケメンときてる。

女子高生のハートを鷲掴みするつもりできっと乗り込んで来たんだ。


無理矢理そう思い込ませようとした。

私は解っていたんだ……
これが恋なんだって。

でも七歳も年上なんだよ。
私が叶う相手じゃなかったんだ。


でも、神様は不公平だよ。
どうしてもっと早く……
いや、せめて三年生で逢いたかったよ。




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