アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
I(自分)・綾
 敬老の日が近付く。
学校も三連休になる。
はずなのに、学園祭なんだ。


文化祭と体育祭が開催されることになっていた。

今時、秋の体育祭なんて流行らないのにね。




 だからその前の土日に……

この機会に母のことを調べようと、田舎へ向かおうと思ったんだ。

思いついたら吉日。
ってどっかで聞いた。

そうだよねー。
モヤモヤが一番肌に悪いよね。
初めて出来たニキビを潰したら、おでこに薄茶色の後が残って気持ち悪いんだ。

もう二度とイヤだと思ったけれど、ストレスは容赦しないでやって来るみたい。


だから少しだけでも心を軽くしたかったのだ。




伯母に連絡して一晩泊めてもらうことにした。

伯母は驚いた。
今まで一度たりとそのようなことをしてこなかったからだ。

母も私も、田舎に泊まった経験などないに等しかったのだ。


勿論、祖父の入院中の付き添いはやった。

通夜と葬儀の時も泊まらせてもらったけど、父だけは理由付けして家に戻ってしまったのだった。


そんなことを思い浮かべながらペダルを漕ぐ。




 自転車を無料の駐輪場に預けてから、駅へ行った。


駅の傍に陸橋があり、その下のスペースが無料駐輪場になっているんだ。

雨にも濡れないし、なかなかのアイデアだと思う。


でも此処は最寄り駅の一つ先。

本当は大変なんだ。

でも、電車料金が安くなったり……
メリットたっぷり。
デメリットは体力でカバーして……


こうして母の……
本当は自分探しの旅が始まった。




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