アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 伯母と私は、ゆっくり実家に向かって歩き出した。


「母って、そんなに泊まりに来なかったのですか?」
私は思い切って質問した。


「綾ちゃんが産まれ前位かな? そう言えばその時だって恵は遠慮していたな」

伯母の答えに納得した。

思い返せば、私も泊まった経験が無かった。


「ハネムーンベイビーとまではいかなくても、結婚して割とすぐに綾ちゃんが出来て」


のっけから母の出産情報をゲットした私。


「確か結婚したのが一月で私が産まれたのは翌年の三月だと聞いてますが」

伯母は頷いた。




 私は母の実家に向かう道すがら、色々なことを知りたいと思った。


そうだよ。
母と父が結婚して、一年以上経ってから私は産まれていたんだ。

母は向こうで妊娠し、実家の近くの産婦人科で出産したのだ。


母の結婚前の子供なんて有り得ないのだ。


それでは何故父は……


『綾は一体誰の子供なんだろう?』
なんて言ったんだろう?

どうして母や私に意地悪をするんだろう?

疑問は、ハネムーンベイビーに近いだけでは片付けられないようだった。


もしかしたら母の浮気を疑っているのだろうか?


でも私の知る限り、母にはそのような態度は見受けられなかった。

四六時中一緒に居た私が一番知っている。




 あれこれ考えても答えなど出るはずがなかった。

自分の生まれる前のことなど解るはずがなかった。


(そうだ……それがあったんだ)




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