アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 「いらっしゃいませ。美味しいチョコバナナは如何ですか?」

茹だるような暑さの下。
汗だくの接客が始まる。


「えっー、こんな場所で衛生面は大丈夫なの?」

訪れた父兄が厳しい意見をくれる。

私達は病院で使用するような大きな消毒アルコールをしめした。


「でも要らないわ」
これ又手厳しい。


それでも必死にアピールして頑張った。
それが効を制して、やっと軌道に乗せることが出来たのだった。


「なんか生ぬるい」
そんな意見もあった。

私はこっそり、例のスーパーで又氷を貰って来た。


そしてやっと……
地獄のような模擬店の売り子を休憩にして、隣の体育館で行われているコンサートを見に行けることになった。


大好きなガールズバンドのコピー曲を客席側から思わずハモった。

隣からも聞こえて来る。
見ると清水さんだった。


「この曲いいよね」
清水さんがウインクした。


「うん。最高!」

私は至福の一時を満喫する為に体育館の天井を見上げていた。




 「ねえ、もしかしたら恋してる?」
突然清水さんが聞いた。


「えっ!?」


「その慌てぶりはやっぱり。もしかしたらあのイケメン教育実習生? 彼奴は大変だよ。『彼奴は駄目だ。ライバルが多過ぎる……』って担任が言ってたでしょう?」


「うん。でも、意味が解らないよ」


「後で教えてあげるね」

清水さんが意味深げに言った。




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