アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 午前中の私の出る種目はこのパン食い競争だけ。

だから気合いが入った。

でも……
大きな口は開けられない。


横を見ると、水野先生が大口を開けガブリとパンに食らいついていた。

その仕草があまりにもユーモラスで、思わず見入ってしまった。

慌てておちょぼ口を辞めて私も勢い良くガブリ付く。
それでも結局ビリッケツ。

こうして私の出番は終わった。


午前中の種目を後三つ。
それで昼食に入り、その後又体育祭は再開される。


それはあの青いドレスが主役の……

あの競技だった。




 体育祭は大盛り上がり。

心配していた熱中症になる生徒も無く、みんなやる気満々だった。

それは水野先生が傍に居るから……
みんなアピールするために必死だったのだ。

この機会に名前を覚えて貰い、あわよくば恋人に。

そんな連中ばかりだったのだ。


勿論……
私もその内の一人。
でも……
先輩方が怖くては水野先生には近付けなかった。




 そんな中。
アチコチで、ライバルと化した生徒達のアピール合戦が繰り広げられる。

徒競走で頑張り過ぎて、足を傷めてしまう生徒も出るほどだった。


そしてそれは清水さんの身にも……

って言うか、それが清水さんだったと後で知ることになった私だった。




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