アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 「あー!? 佐々木、俺達やっぱりあの時初対面じゃなかった」


「えっ、どう言うこと?」


「だから、綾ちゃーん! だよ」

私は訳が解らす、首を傾げた。


「渋谷だよ。お母さんのでっかいパネル!」


「えっーー!? もしかしたら、私の隣りにいたあの格好いい人!」

私は思わず叫んでいた。


「ん!? 今何て言った?」

水野先生の発言で私は失言に気付き、慌てて掌で口を覆った。


(ヤバっ!?)

もう、仮装行列どころではなくなった。

私は……
隣にいる水野先生に心の中まで覗かれそうで、震えを納めることが出来なくなっていた。




 「清水も……イキなことするよな」
水野先生が笑っていた。


「はい。まさか先生があの時の人だったなんて」


「いや……意味が」

その言葉に、私はハッとした。
清水さんが、あの日のことを知っている訳がなかった。

私はもっと動揺していた。


顔が熱くなる。


(ヤバい!? きっと私は耳まで真っ赤っかになっている)

はずだった。

私はそっーと水野先生を見つめた。


でも……
穏やかな表情だった。




 後で、水野先生の笑った訳を知ることになる。

清水さんは私の顔をリンゴのように赤く塗っていたのだった。


でもそれは……
笑いを取ることで、水野先生のファンから私を守るためだったのだ。


私の高揚は、そのお陰で周りの人には気付かれなかったのだ。




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