アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 そして大取りを飾るのは恒例、三年生による宝塚オンステージ。

ベルばら。
風と共に去りぬ。
ついでに、一番
最初のドンブラコッコ。
衣装を担当するのは、デザイナークラブの皆さん。


衣装部とは別に、上級者が入れる特別なクラブだ。

自分の実力を思う存分試せるから、物凄い人気を博していたのだ。


特にこれから受験勉強が控えている三年生は、卒業製作にもあたる。

だから力の入れ具合が半端じゃなかったのだ。




 「格好いいよねー!」
しみじみと清水さんが言った。


「さっきはありがとう」
私もしみじみと言った。


「何が?」

その清水さんの質問を私は笑ってごまかした。


「ん!? もしかしてやっぱり水野先生が好き?」

容赦ない清水さんの攻撃に沈没。

私は小さく頷いた。


「私ね。水野先生と初めて学校で逢った時に恋をしたの。でも、初恋じゃなかった。私はその前に渋谷で先生に出逢っていた。その時、もう既に恋をしてたの」




 「初恋か……」

清水さんの言葉に私は頷いた。
こんなにも正直に打ち明けられる人がいる。


(清水さんと親友になりたい!)

私は素直にそう思った。




 「実は……これ絶対に内緒よ。私と水野先生イトコなのよ。だから初めて会った時びっくりした。その時『やっぱり』って言われた」


私はその言葉で思い出していた。

私が初めて水野先生と逢った日のことと言葉を……


『はー。佐々木って言うんだ。俺は水野。教育実習生だ、宜しくな。てっきりアンタが清水だと思って安心したのにな……』
と、言われたことを……


それだから、水野先生に対して親しそうに話が出来たんだ。

私はパン食い競争や、仮装行列の清水さんの行為を納得した。


(ん? あの叔父さんって、何処かで会った気がするな)

何故あの時そう思ったのか今ハッキリした。


私は清水さんのスマホの画像で家族写真を見ていたのだった。




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