アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 ……ブォーッ!!

突然大きな音がした。


いきなりの出来事にに私は少し震えていた。


「大丈夫? 以外とビビりなんだね」
母はそう言いながら笑っていた。




 午後二時三分。
SLは定刻に出発した。


「さあー、いよいよ始まるね」

ボックス席で私は伸びをしながら言った。


「いい綾、お父さんには絶対に内緒よ」

母が笑いながら言った。

勿論、私は大きく頷いた。


(当たり前だよ。絶対に内緒。二人だけの秘密だもんね。お母さん大好き。大好きだからもう泣かないでね)


私はその時……

確かにそう思っていた。




 次の停車駅は御花畑駅だった。

その途中で垣間見た武甲山の痛々しい姿があった。


「ネェお母さん。この山はどうしてこんなになっちゃったの?」

母が知る訳がない。
でも私は知りたかった。


「あれはね、頂上だけはキープしているの。だから今でも登山が出来るそうよ」

「へー、そうなんだ。どう見てもそんな風には見えないね」


「この山は秩父の生活の糧と言うか、基盤なのね。崩れるのは悲しいけれど仕方ないのかな」

母は、武甲山を見ながら寂しそうに言った。




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