アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 「本当は、二十歳以上じゃないかと思ったの。物凄く大人びていて、素敵だったから私はその人に夢中になったの」


その人と訪れた三峰神社。
その後……
別れていたのだった。


清い交際だった。
勿論男女関係も求められた。

でも結婚するまではと頑なに思っていた母だった。


「田舎者だから、それが当然だと思っていたの。でもお父さんと結婚した後で……」

母は急に黙ってしまった。
見ると涙が溢れていた。


「初めてだった。お父さんが新婚旅行先で、その印に気付いたの。私は『初めてだから』って言ったのよ。でもお父さんは言ったの。『こんなモンは、手術すれば男には解らなくてなるって聞いたぞ』って。目の前が真っ暗になるのが解ったの」


唖然とした。
父は……
結婚したその日から母を見下していたのだった。




 「その後で言われたの。『もしこれで子供が出来たとしても、俺は絶対に認めないから良く覚えておけ』って」

酷い話だった。

本当に父は、愛情の欠片も持ち合わせていない非情な人だった。




 母の辛さに身が詰まる。

二十四歳の母に二十歳だと言って近付いた人。

十八歳だと解って耐えられなくなった母は、別れてしまったのだった。


二十歳でも叔母より年下だったから、それよりも彼は二つも若かったのだ。




 その後お見合いをして父側の仲人が強引に早急に結婚を決めた。

そのことで、何かあると勘ぐった父。

だから……
見下したのだ。

何の落ち度もない母を。


純情可憐な乙女だった母を……




< 84 / 179 >

この作品をシェア

pagetop