アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 父側の仲人は隣町の人で商売人だったそうだ。

父が偶々営業で訪れたのを利用したのだった。


『誰か良い娘さんは居ないか?』
そう声を掛けて、地盤を拡張する。

そんなとこだったらしい。


そして、地区の顔役だった祖父の娘だった母を紹介されたのだった。


祖父に近付くために父と母は利用されたのだった。

祖父には、そんな力があったらしい。


私は叔母を思い出した。

そんな祖父だったから、母を叩かせたのだ。

自分の力を誇示するために。




 愛に餓えていた。
父にも兄弟にも卑下されていた母はその恋の虜になった。


『今度二十歳になります』
交際を父に申し出た時、確かにそう言った。


母の愛を見た両親は、兄弟達の反対を知りながら密かに許していたと言う。

それは田舎に泊まった時に伯母が言っていたから知っていた。

でも……
その人は二十歳でもなかったし、これから二十歳にもならなかった。


彼は十八歳だったのだ。


私が水野先生のことを七歳年上だと悩んだように、急に六歳年下だと判明した彼に母は別れを切り出したのだった。


別れたのが一月。
結婚させられたのが、翌年の一月。
私が、その人の子供であるはずがなかったのだ。



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