アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 「ごめんね綾ちゃん。アナタには辛い思いをさせてしまって。全部母さんのせいなの」

母の言葉に思わず息を止めた。


(えっ!? まさか浮気? だから父は……)

そう思った。


でもそれは、思いもかけない方へ向かった。


「お父さん、本当は男の子が欲しかったの」


(なーんだそんな事か)

そう思っていた。
でもそれは余りにも理不尽な話だった。




 父は母のお腹の中に私が出来た時言ったそうだ。


「『俺は子供が嫌いだ。だけど老後の面倒をみて貰うためには必要だ。だから男の子だったら俺の子供にしてやる。もし女なんか産んでみろ。叩き出してやるからな』そう言われたの」


(そんな馬鹿な……、私は女だよ。何で追い出されなかったんだ!)

その時伯母の言葉を思い出してハッとした。


「でもお母さん、私があの家に居るって事は……」

私はそう言ってみた。
でも母は続けた。


「私が実家の近くの産婦人科で出産するために、アパートを出た時にも言われたの。『女が産まれたら、帰って来なくていいよ』って言ってた」
私は又言葉を失った。


伯母の家で言われたことは間違いではなかったのだ。




 「だから何時もキツくあたって……」
母は泣いていた。


「産まれて来た子供が女の子だったから追い出すなんて言えなくなったのよ。だから仕方なく家に連れて帰ったの」


やはり父のせいだった。


何時も泣かせてばかりで、母の目が暗くなるはずだった。




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