アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 水野先生とはその後何事もなく……

そう……
あれだけ釘を刺されたら誰だって根を上げる。

私はつくづく、女性の嫉妬ほど怖い物はないなと思った。




 水野先生はそんな中、無事に研修課程を終えたようだった。

最後の日ぐらいまともに話をしたかった。

それでさえも邪魔された。

我先にと、先輩方が押し寄せて来たからだった。


手紙攻撃。
携帯電話やスマートフォンによる写真撮影などだった。


どちらも、勿論デジタルカメラもない私は物欲しげに指を噛むしかなかったのだ。




 水野先生が居ない学校。
急に寂しくなったように感じた。

でも私は水野先生のお陰で、清水さんと仲良くなれたのだ。

そのことが何よりも嬉しかった。




 清水さんのお陰で、大いに盛り上がった文化祭。
それに続いた体育祭。

秋のメインイベントの学園祭、無事終了した。


そう……
私の初恋も終了していた。

もう逢えない人を待ち続けらなれくて……

自らピリオドを打ったのだった。


苦しい。
苦しくて堪らない。

でも他に方法が無かった。


学校の先生なら、又逢えるけど……

水野先生は教育実習生。

もうこの学校へ来ることもないのだ。

例え清水さんのイトコだとしても。


もう会える訳などないと思っていた。



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