ビター・スウィート



「どこかに紛れちゃってるらしいんで、内海さん一緒に探してきてくださいよぉ」

「は?なんで俺がお前の為に動かなきゃならねーんだよ。自分で永井と行けばいいだろうが」

「あたしこれから内海さんの所の後輩がミスしたデータの修正があるんでぇ。文句ならその後輩に言って貰っていいですかぁ〜?」

「なっ……!」



俺の後輩のミス……となればそれ以上、強くも言えず、言葉を飲み込む俺に、阿形は「じゃ、ヨロシク〜」とゴチャゴチャしたネイルの手をひらひらと振り去って行った。

あいつも俺相手に動じないが……生意気というか、可愛げがないというか、苦手だ。



「っクソ……行くぞ永井!」

「え!?あ、あの内海さん、ファイルなら私一人で……」

「どこかにまぎれてるなら二人で探した方が早いだろうが!!」

「そうですけど……」



歩き出しながらつい怒ったような口調になってしまう俺に、永井は『いいのかな』とでも言うように不安そうな顔でついてくる。



って俺、なんでまたこうきつい言い方をしてしまうのか。

広瀬だったらきっと『いいよ。二人で探したほうが早いじゃん?それに、棚の上とかちーじゃ届かないところもあるし』と、穏やかに的確に伝えたいことをきちんと伝えられるのだろう。



……つくづく俺とあいつは真逆で、どうしようもない。

チッと舌打ちをして、俺は永井と二人、下の階の一番端にある資料室へと歩き出した。



< 101 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop