ビター・スウィート
そんな俺の背後で、永井は俺が先ほどおろした段ボールを開くと、「あっ」と声をあげた。
「見つかったか?」
「あ、いえそっちじゃなくて、これ」
永井がそう物珍しそうに段ボールから取り出したのは、写真。ここ数年分の入社式で撮った集合写真だった。
恐らくそれもまた、無造作に箱にいれてあったのだろう。
「これ、まだ最近の入社式のですよね」
「あぁ。映ってる顔から見て、永井の一つ上の年のだな」
「……ということは、」
俺が脚立から降りるうちに永井がガサガサと写真を探り、「あった」と見つけ出した一枚。
隣に並んで見れば、それは五年前の入社式……俺や広瀬の時の写真だった。
「あっ、これ内海さんですか?若い!」
「たかが五年そこらじゃたいして変わらないだろ」
「変わりますよ!今のほうが怖い顔してます!」
「ほう?」
写真に映る、新品のスーツに今より少し若い顔に短髪の俺。
確かに年々『顔が怖くなってる』とは言われるが……。
失礼なことを言っているということにも気付かずに、永井はきゃっきゃとはしゃいで写真を見る。