ビター・スウィート
「でも今のほうが凛々しくて、格好良いですね」
ポロッとこぼされたその一言に、思わず一度動きが止まる。
『凛々しくて格好良い』、なんて、ベタなお世辞だ。そう思いながらも、感じてしまうのは嬉しさ。
思ったことをポロッと言ってしまうのがこいつだ。良くも悪くも素直なんだろう。
隠し事や言い繕うことのできない、彼女の言葉。だからこそ、嬉しい時は嬉しいのだとへこんでいるときはへこんでいるのだと、いつだって簡単に分かる。
恐らく先日、花音と行きあった日の言葉も、彼女の本心。
『内海さんが花音さんを想った気持ちは、無駄なんかじゃないです』
下手な励ましやフォローなんかじゃない、そう思えるからその言葉も素直に受け止められる。
「あっ、広瀬先輩もいる!」
するとその名前とともに、ぱぁっと明るくなる顔。
「変わらないなぁ、でもこうして見るとやっぱりちょっと違うかも……」
にこにこと嬉しそうな、俺の前では見せることのない、広瀬にだから向ける表情。そう思うと、込み上げるなんとも言い切れない気持ち。
それをぶつけるように、伸ばした手は写真を持つ永井の右手首を掴んだ。