ビター・スウィート
「……ん、」
ふと目を覚ますと、そこはガタンゴトンと走る先ほどと大差ない景色の車内。
少し寝るつもりが……夢まで見るとは。
ぼんやりとしながら目をひらくと、向かいの窓に映るのは、隣の永井に寄りかかる自分。それと、そんな俺を支えながらも寄りかかる永井。
つまり、互いに頭を寄せ合う、俺たちの姿だった。
……って、なんて恥ずかしい光景だよ!!
『仲睦まじい』と言った視線をこちらへ向ける周囲に、恥ずかしさからバッと頭を起こす。
支えをなくした永井は「ふぁっ」と間抜けな声を出して飛び起きた。
「いきなりなに……ってわぁ!私寝てました!?あれ!?しかももう神田も上野も過ぎてる!?」
「おいコラ、永井……」
「ご、ごめんなさい!すみませんー!!」
本人も気付けば寝てしまっていたのだろう。着いた駅の名前を見た途端、眠気も吹っ飛んだようで顔を真っ青にする。
「ったく、次で降りて折り返すぞ」
「は、はい……」
まぁ、こいつに任せた俺がバカだった……。
「す、すみません、つい電車の揺れが気持ち良くて」
「だからって起こすの任せられて寝るか?普通」
「起きていようと努力はしました!」
「結局寝てたけどな」