ビター・スウィート
*3
彼の嘘
最近、内海さんに感じるドキドキ。
怖くて、きつくて、苦手だったはずの人。なのに、触れるだけで全身が熱く、心臓がうるさい。
……変、なの。
「はぁ……」
ある日の仕事中、デスクに頬杖をつき溜息をついた。頭に思い浮かぶのは、先日の内海さんの強い腕。
転びかけた私を、その腕が抱きとめてくれた。
前にもよろけた時に受け止めてくれたことがあったけど……いざという時すぐに受け止めてくれる腕が、嬉しくて、恥ずかしい。
「どうしたんですかぁ?そんな甘い溜息なんてついて」
「え!?」
「また愛しの彼のことでも考えてるんですかぁ?」
「なっないよ!そんな、愛しのなんてっ……ない!ないから絶対!!」
突然の菜穂ちゃんの一言に、はっと我に返ると、慌てて否定する。
内海さんが!?愛しの彼、なんて、そんなっ……。
「え?広瀬先輩のこと、考えてたんじゃないんですかぁ?」
「へ?えっ……あぁ!うん、そう!広瀬先輩のこと、考えてないわけないよ!うん!!」
「なんですかそれぇ〜??」
って、広瀬先輩のことか!私ってば!!
下手くそな言い訳をする私に、菜穂ちゃんは意味が分からなそうに首を傾げた。