ビター・スウィート
あぁもう、こんなじゃ『内海さんのことばかり考えてます』って言ってるようなものじゃんか!
意識、しすぎ。なんでだろう。
私の心にはずっと、広瀬先輩だけがいたはずなのに。日に日に内海さんの姿ばかりが色濃くなっていく。
「ちー、いる?」
「へっ!?あっ、広瀬先輩!」
するとひょこっと部屋の入り口から姿を現したのは、広瀬先輩。
私の心の惑いなど知るわけもなく、今日もにこにことした笑顔で手を振る彼に、つい反射的に席を立ち入り口へと駆け寄った。
「どうかしました?」
「前にちーがサンプル見てアドバイスくれた新商品が、売り出し一週間で予定の数の倍売れてさ」
「本当ですか?よかったです」
「部長も大喜びでね、本当ありがとう」
そういえば、以前広瀬先輩が『商品のアドバイスがほしい』と開発中の商品を持ってきたことがあった。
私がしたのは、客層として狙っているという大人の女性に合わせて使い心地やデザインを少しアドバイス、というか感想を述べた程度だけれど……広瀬先輩は嬉しそうに感謝を伝える。
「でさ、お礼に食事でもごちそうさせてほしいんだ」
「えっ!?でも私、そんな大したことは……」
「ううん、ちーのおかげもすごく大きいと思うから。ね?」
優しく微笑み問いかける広瀬先輩の表情に、私は断れるわけもなく小さく頷く。