ビター・スウィート
この心が、揺らいでいるような気がしていた。けど、やっぱり私の中の一番は広瀬先輩だ。うん、そう。
内海さんへの気持ちは、きっと違う。これまで怖いとしか思えなかった人の優しさを知ったから、ギャップに驚いてしまうだけ。
ドキドキも嬉しさも、きっとそれだけ。
認められない気持ちに、言い聞かせるように心の中で呟いた。
迎えた翌日。気合でいつもより早く仕事を終わらせた私は、会社の更衣室で念入りに化粧や髪型を直し、約束の時間である夜十九時に駅から広瀬先輩の家までの道を歩いていた。
しまった、念入りに支度しすぎて少し遅れた……!
広瀬先輩から『家で支度して待ってるから、十九時にうちに直接来て』と言われていた私は、手土産の入った紙袋を手に、教えて貰った住所を頼りに慣れない土地を歩く。
えーと、駅から歩いてすぐの道を入って、信号を右に、そこからまっすぐ……。
すると目の前に建つのは、真っ白な壁の二階建てのアパート。
「『ハイツ白花』……ここだ」
まだ新築なのだろうか、外壁も辺りもとても綺麗。駅からも近いし……家賃高そうだなぁ。駅から徒歩二十分という立地にある私の安アパートとは大違い。