ビター・スウィート



「お、永井。お前昨日どうした?」

「……いきなり休んですみませんでした、失礼します」

「あっ、おい!永井!」



そしてすぐさま足早にその場を歩きだす。

ダメだ、逃げちゃう。顔も見られないし、話も出来ない。

広瀬先輩とは落ち着いて普通に話せるのに、内海さんに対してはこんなに気まずいんだろう。



「……はぁ、」

「あ、ちーせんぱぁい。おはよーございま……ってなんですかぁ、その顔」



やってきた商品部のフロアで、溜息混じりにドアを開けると先に出勤してきていたらしい菜穂ちゃんは、先ほどの広瀬先輩同様驚いた顔でこちらを見た。



「あ……これは、その」

「あ〜……健康だけが取り柄のちー先輩がいきなり休んだかと思えば、そういうことですねぇ。広瀬先輩と何かあったんですかぁ」

「え!?」



そもそも私がいきなり休んだ時点で少し察してはいたのだろう。顔を見た途端確信したように菜穂ちゃんは言う。

きっと先ほどの広瀬先輩のように言ったところで騙されてもくれないだろうし……私は言い訳をすることを諦め、菜穂ちゃんの隣の自分のデスクに座った。


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