ビター・スウィート
「結局さっきも、広瀬先輩とは落ち着いて話せたのに、内海さんには明らかに避けちゃった」
ぼそ、と呟いた私に菜穂ちゃんは少し考えたように「うーん」と首を傾げると、手元の爪やすりをデスクに置いた。
「で、結局ちー先輩はどっちに傷付いてるんですかぁ?」
「え……?」
どっち、に?
「私にはちー先輩が、広瀬先輩の結婚のことより内海さんに隠し事をされてたことの方が落ち込んでるように見えるんですよねぇ」
私が、傷付いている理由。
それは広瀬先輩のことより、内海さんのこと?
……そんなわけない。腹は立っても、内海さんに対して傷付く理由がないよ。
私はただ、バカにされていたんだろう、笑われていたんだろうってことが悔しくて。それだけで。
それ以上のことはないはず、なのに。そう考える間にも、頭のなかをぐるぐると巡るのは鋭い目をした彼の姿。