ビター・スウィート
「……内海さんが悪魔なのは事実ですもん」
「まだ言うか、この減らず口が」
「悪魔じゃなかったら、あんな隠し事しません」
その一言だけでもう泣きそうになってしまう。けれどその気持ちを堪え、真っ直ぐに目を見て言う私に、内海さんはつねる手をそっと離した。
「……教えて、ください。どうして黙ってたんですか?……本当に、バカにして笑ってたんですか?」
「違う。それだけは違う。お前のことバカにもしてないし、笑うこともない」
「じゃあ、どうして……?」
勇気のいること。だけど、知りたいから。
『バカにして笑ってた』そう言いながら、そうじゃないと信じたい自分がいるから。
だから、教えて。あなたの気持ちを教えてください。
「……お前が、本気で広瀬を好きだって、知ってたから」
「え……?」
私が本気だったから、……?
「だってそうだろ。傷付くだろ。そうやってへこんで、泣くだろ。お前が傷付くのは、見たくない」
そう言ってこちらを見つめる表情は、いつもの強い瞳とは違う。弱く、悲しげな、切ない瞳。
私が傷付くから、言えなかった。それってつまり、全て私のため?
私のことを考えて、言わずにいてくれた?