ビター・スウィート
「……けど結果としてそれがお前の気に障ったなら、謝る。ごめん」
ずるい、
どうしてこんな風にいきなり、『ごめん』だなんて言うの。
普段は偉そうで強気で、謝りなんてしないくせに。なんで、こんな時ばかり。
「……内海さんの、バカ」
呟いて、彼の胸元を握り拳で軽く叩く。バカ、バカ、そう訴えるように。
「なんでそんな優しさ見せるんですか……いつもみたいに遠慮なしに、何でも言ってくれればいいじゃないですか」
「……けど、」
「傷付きますよ!泣きますよ、そりゃあ!ずっと好きだったんですから!」
傷つかないわけがない、落ち込まないわけがない。
だって、ずっと彼を想って、好きだったんだから。大好きだったんだから。
「……でもそれ以上に、内海さんに『バカにされてたかも』って、そう思うほうが、つらい」
笑われて、バカにされていたかもしれない。そう思う度、胸が痛い。
「……バカ」
内海さんは小さく呟くと、胸を叩く私の手をそっと握った。私より何センチも大きいその手は、この手をぎゅっと包み込んでしまう。