ビター・スウィート
「あ、永井。俺五階寄るから」
「え?あ、はい……」
言われたままにエレベーターのボタンを押す私に、内海さんは無意識にか自分でも手を伸ばしボタンを押す。
当然お互いに同じボタンを押す指は、内海さんが上になる形で重なった。
「わっ、あっ……すみません!」
「あ……悪い」
驚き、互いにパッと手を離す。
て、手に……触れてしまった。
思わずドキドキとしながら自分の手をぎゅっと握り、ちら、と横を見れば内海さんはそっぽを向いていた。
よく見ればその頬は少し赤く、照れているのであろうことを知る。
内海さん……照れて、いる?
あぁ、もしかしたら彼の普通の態度は照れ隠しで、本当は昨日のことを意識してくれているのかもしれない。
そうだったら、嬉しい。
同じように、ドキドキとして、愛しさを感じてくれていたら、いいのに。
そんなことを思う私を乗せて、エレベーターは上って行く。