ビター・スウィート
それからはいつも通りに仕事に追われ、気付けば時計はお昼過ぎを指していた。
そろそろご飯でも食べようかな。社食とコンビニどっちにしよう……。社食のほうが美味しいけど、値段も張るし……よし、今日はコンビニにしよう。
そう決めると、会社から徒歩五分ほどの近距離にあるコンビニへ行くべく、財布を手にフロアを出た。
「……あれ、」
すると、目の前には廊下を歩く広瀬先輩の姿。
「広瀬先輩、お疲れ様です」
「あ……ちー。お疲れ様」
かけた声に、広瀬先輩はこちらへ向くと足を止める。
「お昼?」
「はい、今日はコンビニで買ってこようかなって」
「そっか。じゃあ俺もたまにはコンビニにしようかなぁ」
いつも通りのライトグレーのスーツに、水色のネクタイ。ところが、にこ、と見せるその笑顔にはどこか元気がないように見える。
どうしたんだろう。寝不足なのか、目元も少し疲れているように感じられる。
「どうかしたんですか?」
「え?」
「元気、ないように見えるので」
私の指摘に広瀬先輩は少し驚くと、まいったように小さく笑った。