ビター・スウィート
「……バカですか、あなたは」
「へ?ちー?」
「なんでそう鈍いんですか!彼女さんだったら……他の女の子と二人きりなんて嫌に決まってるじゃないですか!!」
突然張り上げた声に、驚く二人。それ以上に私自身も驚いている、
だけど、止まらない。気持ちが喉から上って、『彼へ届け』と吐き出される。
「自分の気持ちを分かってもらいたいから、怒って伝えてるんですよ!わざわざ電話してきてまで、キャンセルしてくるって言うってことは、引き止めてほしいんですよ!!」
本当に嫌になったのなら、怒ったり、伝えようとなんてしない。本気ならきっと、何も言わずにキャンセルしている。
それらをして彼女が知りたい気持ちは、広瀬先輩の本当の心。
「本当に好きなら、諦めないでくださいよ!!拒むな!怯むな!ちゃんと話し合って、気持ち伝えろ!!」
こんな風に声をあげて、誰かに聞こえてしまうかもしれない。広瀬先輩も、内海さんも引いているかもしれない。
だけど、伝えたい。鈍く遠い彼の心に、しっかりと聞こえるように。
「私……ずっと、広瀬先輩のことが好きでした」
「え……?」
「優しくて、頼れて……本当に好きでした。大好きでした」
私がしなきゃいけないことは、素直に自分の気持ちを伝えること。
素直に、本当の気持ちを。