ビター・スウィート



「……褒美に、俺の胸で泣かせてやろう」

「じゃあ、鼻水つけても怒らないでくださいね……」

「あぁ。今日だけは、許してやる」



それは、昨日と同じ力強く優しい腕。ドク、ドク、と聞こえる心臓の音がより一層彼を近くに感じさせる。



これで、よかった。気持ちは言えた。自分の一番強く想う、気持ちを。

もしかして内海さんは、私が広瀬先輩につけこんだりするわけないと思って、ああ言ってくれたのかな。

『気持ちを伝えろ』と、言いたくて。



……なんて、美化しすぎかもしれない。

だけど、それでいい。そう思えてしまうくらい私にとって彼は優しい人。



その優しさに甘えて、胸に縋って泣いた。




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