ビター・スウィート
「昼間は、ありがとうございました!!」
夕方、仕事を終え帰宅しようとさたところフロアの外で待ち受けていたのは、広瀬先輩の声と深いお辞儀。
「わっ、広瀬先輩!?戻ってたんですか!」
「うん、ついさっき……これから内海からのお説教タイムとたまった仕事を片付けなきゃいけないけど……」
「お、お疲れ様です……」
『中抜けって言ったよなぁ?誰が定時ギリギリに戻ってこいって言った?あぁ?』
そう怒りに静かに燃える内海さんの姿が想像つく……。
あの鬼のような顔を思い浮かべゾッとする私に、広瀬先輩は頭を上げると手にしていたコンビニの袋を差し出した。
「これ、一応お礼と言うか……また改めてきちんとしたお礼は、必ず!」
「えっ?いいですよ、そんな!」
「ううん、気持ちだから!」
ずいっと差し出される袋を渋々受け取り中をみると、そこには甘いカフェオレやチョコレートなど私が好きなお菓子などが沢山入っていた。
私の好きなもの、覚えていてくれたんだ……。
彼が私の小さなひとつでも知ってくれている。そのことが、嬉しい。