ビター・スウィート
笑っていて
梅雨が明け、カラッとした空気と照らす太陽。
突如迫ってきた夏という季節を感じさせるかのように、暑さが増す今日この頃。女性社員の制服は半袖となり、俺たち男も半袖やポロシャツが許される季節となった。
元々ネクタイが窮屈で好きじゃない俺にとっては、ノーネクタイでも周りにあれこれ言われずいい季節だ。
けどこの時期でこの暑さ……夏はどうなるんだか。
商品部のフロアにある自分のデスクで、パソコンのキーボードを打つ手を止め窓の外を見れば、爽やかな青空が広がっている。
「内海さん!」
そんなぼんやりとした気持ちを打ち破るように響いたのは、名前を呼ぶ高い声。その声ひとつで、呼ぶのが誰かなんて簡単に分かる。
「あー……永井か。なんだよ」
「言われてた資料のまとめ、終わりましたよ」
「予想より早いな。今日一日はかかかるかと思ってたのに」
笑いながら顔を向ければ、そこにいたのは案の定、永井だった。その手には数十枚という分厚い書類が抱えられている。