ビター・スウィート
「失礼ですね、私だってやれば出来るんですからっ」
「はいはい。よく出来ました」
椅子に座ったまま適当に言う俺に、永井は子供のように頬を膨れさせながら書類を置こうとする。
……なんだよその顔。かわいーな、おい。
そんなことを思ったその時、半袖のシャツからのぞく白い二の腕が目に入った。
「……んじゃ、やればこのたるんだ二の腕も締めることも出来るんじゃないのか?」
「んなっ!?」
指でむにむにと二の腕をつまめば、永井は惑い、驚き、照れ……とみるみるうちに顔色を変える。
「っ……内海さんのセクハラ悪魔ーーー!!!」
そして最終的には怒った様子で、書類の束で俺を叩きその場をバタバタと後にした。
セクハラ悪魔って……。いや、まぁ俺の構い方も小学生並だとは思うが。
仕事に燃えたり、ちょっとつまんだだけで照れたり怒ったり……ついこの前まで、失恋して泣いていたとは思えない。
元気でいてくれるのは、いいことだけどな。
「内海ー」
「あ?あぁ、広瀬」
すると入れ替わるようにしてやってきたのは、広瀬。その手にもまた書類が数枚持たれている。