ビター・スウィート
「この前きたクレームのまとめ、サポート課から回ってきたよ」
「クレーム……見なきゃいけないとは思いつつ、見たくねーな」
「こればっかりはねぇ。一応、部署全員に見せておくようにって」
「わかった」
自分たちの作った商品に対しての批判や不満、それらがずらりと綴られた報告書にどことなく目を通すと、デスクにぽいっと置いた。
「そういえば、さっきちー来てた?『セクハラ悪魔ー!』って、廊下までよく聞こえてきたよ」
「……あの野郎……」
周りに何事かと思われるだろうが……!
チッと舌打ちをした俺に、広瀬は小さく笑うとふと思い出したように言う。
「……そういえば、聞いてもいい?」
「なんだよ」
「あの、さ……その、内海はちーの気持ち、知ってた?」
永井の、気持ち。それは恐らく先日、永井が広瀬に伝えた『好き』という気持ちに対しての言葉だろう。
少し照れ臭そうに、遠慮がちに問う広瀬に、俺は椅子に座ったままで頷く。
「そんなの、とっくに知ってる」
「えっ……えぇ!?そうなの!?」
「お前本当に鈍すぎ。鈍すぎてムカつく」
本人としては、本当に『唐突』だったのだろう。そこまで驚かれるのもまた、永井にとってはショックかもしれないが。