ビター・スウィート
「お前、本当にあいつの気持ちに一ミリも気付かなかったのか?あれだけ一緒にいて?」
意地悪い聞き方をしていると思う。けれど、俺からすれば純粋に疑問だ。
男女が何年も近くで過ごしていて、それでいて向こうはあれだけ態度に出やすいにも関わらず気付かないものか?
もしかしたら、少しは気付いていて見て見ぬ振りをしていたのかもしれない。だとしたら、残酷な奴だと思う。
そんな気持ちで問いかけると、広瀬は真面目な顔で小さく頷いた。
「……ちーには申し訳ないけど、正直、全然気付かなかった」
「っていうのは?」
「ずっとちーは、俺にとって“一番近くにいる後輩”でさ。妹みたいで、ほっとけなくて。でもちーがずっと俺のことをそう想っていたなら……なんか、悪いこと、したなって気持ちもある」
真剣なその答えから、きっと本当に気付かなかったのだろう。気付いていたら、もしかしたら結果はなにか違かったかもしれない。そう感じ、「……そーか」と頷いた。
「俺も、お前に聞きたいことがあった」
「え?なに?」
「永井の気持ちを聞いて、お前はどう思った?」